相続税の節税方法 2018/8/16

法人化で相続税を節税!不動産賃貸など個人事業に効く相続対策

法人化で相続税を節税!不動産賃貸など個人事業に効く相続対策
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不動産賃貸業などの個人事業は、法人化することで将来の相続税を節税できる可能性があります。しかしそのためには長期的な財産移転計画が必要です。法人化による相続税節税のメリット・デメリット、注意点について解説します。

なぜ法人化で相続税を節税できるのか?

不動産賃貸業などの個人事業を営んでいる方が亡くなると、その方が所有していた財産を相続するには相続税がかかります。事業の規模によっては高額な相続税負担となるケースもあるでしょう。一方、会社を設立して計画的に財産を移転すれば、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。

法人には相続税がない

相続税は個人の財産を相続する場合にかかる税金です。ですから社長が亡くなったからといって、法人を引き継ぐ際に法人の所有する資産に対して相続税はかかりません。

贈与税の節税

通常、一定額以上の財産を贈与した場合には、相手が家族であっても贈与税がかかりますし、生前贈与の非課税枠にも限度があります。

財産を引き継がせたい家族を法人の役員にして役員報酬を支払えば、贈与税を支払わずに財産を移転することが可能です。法人化することで、相続税だけでなく、贈与税の負担も軽減できるのです。

不動産賃貸業を法人化する場合

不動産賃貸業を法人化して相続税を節税するケースを具体的にみていきます。

建物を法人所有に

不動産賃貸で家賃収入を得ているのは主に建物部分ですから、建物部分を個人から法人へ売却します。法人に売却するので、法人から個人へ譲渡代金を支払う必要がありますが、その価格は基本的に、帳簿上の未償却残高などを用います。建物部分だけ、しかも未償却残高で譲渡することで、譲渡益(譲渡価格が取得費より高い場合の利益)の発生による所得税負担を回避できます。

法人に譲渡代金分の資金がない場合は、個人からの長期借入とします。法人から個人に長期間かけて返済をすることで、お金をゆっくり移動させます。利子はとる必要はありません。

建物の未償却残高とは?

建物は時の経過とともに価値が下がるものです。ですから、その下がった部分を簿価に反映させるため、減価償却費を毎年計上します。未償却残高とは取得価格のうち、まだ減価償却されていない部分のことをいいます。

計画的に財産移転をすることの必要性

建物の譲渡価格が固定資産税評価額と比べて高額だったり、被相続人の債権の大部分が残ったままで相続が発生すると、節税効果が半減してしまいますので注意しましょう。被相続人に債権があると、その債権には相続税負担が生じてしまうのです。

株式も同じです。被相続人が株式を所有したまま相続が発生すると相続税がかかってしまいます。法人化での相続税節税を実現するには、長期的な視点で綿密な計画をたてることが重要です。

家賃収入は役員報酬に

個人で所有していた建物を法人へ売却すると、そこから発生する家賃収入は法人の収入です。将来相続人となる家族を役員にして家賃収入を分ければ、贈与税も相続税も負担せずに財産を平等に、計画的に移転できます。

土地は相続時に売却

土地は建物と違い、時が経過してもその価値は下がりません。親の代に取得したような土地ですと、取得価格に対して時価が高騰している場合もあります。そのため土地は法人化の際ではなく、相続発生時に法人へ譲渡するとよいでしょう。ただし下記の点に注意する必要があります。

借地権の認定課税に注意

法人へ土地を売却せずに、建物だけ売却してその建物の賃貸収入を法人が得る場合、土地は個人のものですから、借地権が発生します。権利金の受け渡しを行わずに借地権を贈与されたとみなされると、法人税法上の受贈益が生じて課税されてしまいます。借地権の認定課税です。

借地権の認定課税を回避する「土地の無償返還に関する届出書」

「土地の無償返還に関する届出書」とは、土地の賃貸契約終了後は無料で返却すること、一方が法人であることなどを条件に、借地権の認定課税を回避できる制度です。

個人の土地を利用する場合、地代を安くし過ぎない(固定資産税の2~3倍程度)ことや、賃貸借契約をすることなど、さまざまな注意点があります。きちんと手続きをしないと、小規模宅地の特例の適用を受けられなくなるなどの不利益が生ずる場合もありますから注意しましょう。

個人事業の法人化の際は、税理士に相談し、必要な届け出や契約についてアドバイスを受けることをお勧めします。

相続税以外に法人化で節税できるもの

法人化による節税効果は、相続税以外にも複数あります。代表的なものを見てみましょう。

給与所得控除

法人から給与を受け取ると、給与所得控除という一定額の控除が受けられます。給与所得控除は給与をもらうための経費を、受け取った給与から控除できる制度です。自分の会社から給与を受け取っても控除を受けられますから、課税される所得をさらに圧縮できます。

所得税が優遇される退職金

退職金は所得税法で優遇されており、退職所得控除という控除を受けられます。給与所得控除よりもさらに大きな節税ができます。個人事業主には退職金という概念はなく、引退を考えても特に税法上の優遇はありませんから、法人だけのメリットです。

所得の分散

所得税は累進課税です。累進課税とは、課税対象額が上がれば、税率があがる制度ですから、課税所得が多ければ多いほど、税負担が増すということです。法人化して法人と個人への報酬に所得を分散し、さらに複数の役員(家族など)へ報酬を支払えば、所得が分散できて全体で見れば大きな節税が期待できます。

経費の幅が広がる

法人化のメリットとして、経費の幅が広がることがあげられます。個人事業では認められにくい内容の経費でも、法人名義で消費し、法人の事業との関連性があれば経費に計上できます。

出張日当

法人は出張日当を経費にできます。役員も利用でき、個人の所得税が課税されず、法人の損金計上ができるため、節税対策として効果的です。出張旅費規程の作成が必要ですので注意しましょう。

生命保険の活用

社長や役員の生命保険に法人で加入する節税方法もあります。個人事業主にも生命保険料控除はありますが、控除額は最大で12万円までと決まっています。一方法人では、控除額に上限がなく、支払保険料の全額を損金に算入できるタイプの生命保険もあります。

この仕組みを上手く利用することで、損金計上しつつ、退職金に充当するための資金を貯められるのです。ただし、解約返戻金が支払保険料の総額を下回る場合などもありますから、必要な保険を見極めて加入することがポイントです。

相続税節税目的で法人化することのデメリット

相続税節税目的での法人化には、デメリットもあります。

会計処理が複雑化

個人事業主と違い、法人の会計処理は複雑ですし、会計ソフト導入のコストもかかります。複式簿記や法人特有の会計仕訳を理解するには手間も時間もかかります。自分で会計処理ができなければ、職員を雇うためのコストもかかります。

法人化する時の費用

法人化する際にかかる費用は、司法書士への報酬も含めると合同会社で15万円、株式会社で30万円程度です。

赤字でも毎年費用がかかる

法人は設立後もし赤字でも、毎年地方税などが最低でも7万円かかります。税理士などの専門家への顧問料や確定申告費用も必要です。

移転・廃業にも登記費用がかかる

法人の場合、本店移転をする際や、廃業の際にも数万円~の登記費用がかかります。

収入が少なければ法人化のメリットはほとんどない

法人化して節税が期待できるのは、相当額以上の収入があるケースに限られます。一般的には1千万円以上などと言われますが、事業の内容や将来性などによりケースバイケースです。個人事業の方が節税になるケースもありますから、個人事業のままで相続した場合の相続税負担との比較を行い、法人化は慎重に検討しましょう。

相続人同士のトラブルの可能性も

複数の相続人が役員になった場合、将来法人の運営方針などについて意見が合わずにトラブルになる可能性も無視できません。

相続税節税目的で法人化する際の注意点

資本金は1000万円未満にして消費税対策を

年間の課税売上高が1,000万円を越えなければ、法人でも消費税の納税義務はありません。また、課税売上高の金額がいくらであっても法人設立後最初の2年間、消費税は免税されます。ですが、資本金が1,000万円以上の法人を設立すると、課税売上高がいくらであっても、初年度から消費税を納税しなければなりません。

節税目的で法人を設立する場合は、資本金は1,000万円未満にすることで、消費税を節税できます。

被相続人ではなく、相続人を株主にする

財産を持っている本人(被相続人)が株主になってしまっては、財産移転はできません。株式会社を設立する際は、相続人を株主にすることで節税できます。

相続人を役員に

相続人を役員にすることで、労働時間の拘束などの必要がなく、財産を移転できます。相続人全員を役員にすると、平等に財産移転ができます。

法人の財産は個人の財産ではない

法人へ売却して移転した財産は、あくまで法人のものです。相続人個人の財産になるわけではありませんから、注意しましょう。株主が家族だけの場合には、あまり意識することもありませんが、法人と個人は別人格ということは認識しておく必要があります。

現金が必要だからといって株式を無計画に手放すと、会社の支配権の維持ができなくなってしまう恐れもあります。

相続税節税で法人化する際は税理士に相談を

法人化は計画的に財産移転をすることで、究極の相続税節税法にもなり得ます。しかし、法人化には複雑な手続きが必要ですから、必ず税理士へ相談することをおすすめします。

個人から法人へ、財産を無計画に移転しても節税にはつながりません。相続税節税目的の法人化では、長期的な財産移転計画が不可欠です。個人から法人へ財産を移転する際の資金の流れについても、余計な税負担が増えないよう、税理士のアドバイスを受ける必要があるでしょう。

税理士などの専門家なら、法人化のメリット・デメリットを加味したうえで最適な節税方法を提案できるでしょう。法人化について税理士に相談すれば、設立・その後の節税対策について・日々の会計処理・確定申告手続き・相続税対策・相続発生時の税務処理までトータルでサポートしてもらえます。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
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