遺産相続の基本 2020/8/5

祖父・祖母(おじいさん・おばあさん)の土地は孫にも相続できる?

祖父・祖母(おじいさん・おばあさん)の土地は孫にも相続できる?
このエントリーをはてなブックマークに追加

家庭の事情や税負担を減らしたいことから、「子ではなく孫へ土地を相続させられないか?」とお考えの方もいらっしゃることでしょう。 「親から土地を相続する予定だが、すでに家も土地も持っているので自分の子(孫)に直接相続させたい」という希望もあるかもしれません。しかし、孫は基本的には相続ができません。今回は、孫が土地を相続できる場合と注意点などについて解説します。

孫は通常、土地を相続できない

通常、孫は土地を相続できませんが、子が死亡している場合は代襲相続により相続できるケースもあります。孫が相続できない理由と、代襲相続についてみていきます。

法定相続人でない孫は土地を相続できない

孫は本来、法定相続人にはなりません。ですから、特別な配慮なしに土地を相続させることは不可能です。

<相続人の範囲>

死亡した人の配偶者は常に相続人ですが、それ以外は以下の順位で相続人になります。

  • 第一順位…死亡した人の子(直系卑属)
  • 第二順位…死亡した人の父母や祖父母(直系尊属)
  • 第三順位…死亡した人の兄弟姉妹

ただし、相続発生時に子がすでに死亡している場合は、その子(孫)が代襲相続人になります。この場合、孫であっても子と同じ相続権がありますので、土地を相続できる可能性があります。※孫が土地を代襲相続する場合については記事後半で解説します。

孫に土地を相続する方法

代襲相続人ではない孫が土地を取得するには、次のような方法があります。

    遺言で土地を孫へ遺贈
    被相続人が孫と養子縁組をしておく
    孫へ土地を生前贈与する(相続時精算課税制度の利用)

これらの方法を取ることで、代襲相続人ではない孫へ土地の相続を図ることができますが、それぞれに実施する際の条件やデメリットも存在します。以下、ひとつずつ解説していきます。

遺言で孫に土地を相続させる

遺言で孫に土地を遺すことを示せば、孫への相続は可能です。孫が法定相続人の場合とそうでない場合をみていきます。

遺言で孫へ土地を遺贈

法定相続人ではない孫へ遺言で土地を遺す場合は、相続ではなく遺贈といいます。他に法定相続人がいる場合は、土地の遺贈が遺留分(相続人が最低限受け取ることができる相続分)を侵害しないように注意して遺言を作成することをおすすめします。

孫を土地の相続人に指定

孫が代襲相続人の場合でも、他に相続人がいれば土地を取得できるとは限りません。遺言に土地を孫に相続させることを明記しておきましょう。

遺贈のケースと同じく遺留分には注意してください。万が一遺留分減殺請求をされると、土地を分割したり手放さなければいけなくなるかもしれません。

孫を養子にして土地を相続させる

孫を養子にすれば必ず法定相続人になりますから、土地を相続させやすくなります。孫を養子にして相続させる場合のメリットやデメリットをみていきます。

養子と子の遺産分割上の扱いは同じ

遺産分割をするとき、養子と実子の扱いは同じです。他の法定相続人が孫(養子)の親である子だけの場合などは、問題なく土地を相続させられる可能性が高いでしょう。

孫を養子にすることのメリット

孫を養子にして相続させることには、土地を相続させやすくなること以外にもメリットがあります。

子を飛ばすことで相続税負担の軽減

遺言がなく養子縁組もしていない場合は、孫へは相続できませんからいったん子が相続することになります。すると子から孫への相続時に再度相続税がかかってしまいます。贈与した場合には贈与税がかかります。

孫を養子にして子を飛ばして土地を相続させると、相続税を課される回数が1回減るのです。

非課税枠が増える

相続税では、法定相続人の人数が増えると非課税枠も増えます。孫を養子にすることで非課税枠が増え、節税に繋がります。ただし、孫は何人でも養子にできますが、この非課税枠を増やせるのは1人(実子がいない場合2人)だけです。

登録免許税・不動産取得税負担の軽減

遺言がなく養子縁組もしていない孫へ土地を遺贈すると、その土地の固定資産税評価額の2%を登録免許税として納めなければなりません。さらに固定資産税評価額の3%が不動産取得税としてかかります。これらは通常、かなり大きな負担です。

しかし養子縁組をして法定相続人になった孫は、遺贈ではなく相続で土地を取得するため、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%と優遇され、不動産取得税は非課税です。代襲相続人の孫も法定相続人ですから同様です。

<登録免許税・不動産取得税の相続と遺贈>
  相続(代襲相続・養子縁組による相続) 遺贈(法定相続人以外の人に遺言で財産を遺す)
登録免許税 固定資産税評価額の0.4% 固定資産税評価額の2%
不動産取得税 非課税 固定資産税評価額の3%(軽減措置なしの場合)

孫を養子にすることのデメリット

孫を養子にして土地を相続させようと考えたとき、他にも相続人がいる場合には注意が必要でしょう。孫の親である子以外に子がいる場合などは相続財産分割のバランスが悪くなってしまい、相続人間で揉める原因になりかねません。

特に土地のほかに相続財産がほとんどないケースでは、他の相続人が不公平感から遺留分を請求してくる可能性もあるでしょう。子から孫(養子)への2次相続がある点にも留意しましょう。養子にした孫へは将来的に相続人2人分の相続財産が渡る可能性があるのです。

養子の孫への相続は2割加算の対象

配偶者と1親等の血族以外の人への相続は2割加算といって、相続税が2割増しになります。1親等の血族とは、父母・実子・養子をいいます。また、代襲相続する孫は1親等の子の代襲相続人なので2割加算されません。

遺贈により相続財産を取得した孫は2割加算の対象です。そして注意したいのが養子にした孫も2割加算の対象となることです。通常の養子は対象となりませんが、養子になった人のうち被相続人の孫だけが2割加算の対象と決まっています。

2割加算の対象にならない相続人
  • 子(孫以外の養子を含む)
  • 配偶者
  • 代襲相続人の孫
2割加算の対象になる相続人
  • 祖父
  • 祖母
  • 兄弟
  • 姉妹
  • 代襲相続人以外の孫

相続時精算課税制度で孫へ生前贈与する

孫に土地を遺す方法の一つとして、生前贈与があります。孫が土地を確実に取得できますが、年間110万円を超える生前贈与には贈与税がかかります。

相続時精算課税制度を利用した生前贈与なら、2,500万円までは贈与税が非課税になり、贈与税の負担が減ります。相続発生時に相続税がかかりますが、贈与税を一部負担した場合、その部分は相続税から差し引かれます。また、相続税の計算時には贈与した時の土地の時価を使います。

孫にまだ贈与税を支払う財力がない場合や、土地が値上がりしそうな場合に、有効な手段と言えるでしょう。

相続時精算課税制度の対象

相続時精算課税制度を利用できるのは、60歳以上の祖父母または父母から贈与を受けた20歳以上の子や孫です。制度創設時は65歳以上の祖父母または父母から子(直系卑属)への贈与とされていましたが、平成27年に改正となり、孫への贈与も加わりました。

相続時精算課税制度は土地や建物などの不動産、現金など、どのような資産を生前贈与した場合にも利用できます。

相続時精算課税制度の注意点

法定相続人でない孫は、遺言で指定がない限り他の相続財産を取得できません。相続発生時に当該土地の相続税負担のみが発生するため、相続税の支払いに充てる資金が用意できなくなるリスクがあります。

さらに以下のようなことから、税負担が増してしまう可能性もあります。

相続税の2割加算

相続時精算課税制度では贈与税を支払わない(支払いが減る)代わりに、相続税を支払います。孫は相続税の2割加算の対象(代襲相続の場合を除く)ですから、相続税負担が大きくなってしまいます。

相続時精算課税制度は自動継続

相続時精算課税制度は一度利用すると、取り消すことができません。土地の生前贈与で相続時精算課税制度を利用したのち、他の資産を孫へ贈与する場合にも毎回継続されます。暦年課税の110万円の控除を受けられなくなりますから注意してください。

小規模宅地の特例が利用できなくなる

相続時精算課税制度を利用すると、小規模宅地等の特例は利用できなくなります。評価額8割減という大きな優遇を受けられなくなりますから、小規模宅地等の特例の適用ができる土地の場合は注意が必要です。

代襲相続で孫が土地を相続する場合の注意点

冒頭で少しご紹介した通り、相続の時点で子がすでに死亡している場合は、孫が代襲相続人となり、祖父・祖母の土地を相続することができます。ただし、代襲相続の場合も、下記のような点には注意が必要です。

その土地を孫が取得できるとは限らない

孫が代襲相続人となった場合でも、配偶者や他の子がいる場合は、ともに相続人になります。遺言がない場合は、相続人間で協議をして相続財産の分割方法を決めますから、孫がその土地を取得できるとは限りません。

また、相続財産全体の額に対して土地の価格の割合が大きすぎる場合にも注意が必要です。法定相続割合に基づいて相続財産の分割をするのが基本ですから、その土地のすべてを孫が相続することは難しいケースも多いでしょう。

子が相続放棄をしても孫へは代襲相続できない

相続人である子が、その子(孫)へ直接相続させるために相続放棄をした場合はどうでしょうか。相続人はすでに土地や家を持っていて、相続財産である土地を孫に相続させれば手続きも相続税も1回で済む、という事情などが考えられますね。

しかし、代襲相続が発生するのは、子が死亡したときか、相続人の欠格事由に該当する場合か、相続人から廃除された場合のみとされています。つまり相続放棄をすると代襲相続は発生せず、子も孫も土地を相続できなくなってしまうのです。

子が養子の場合は代襲相続できない?

子が養子の場合の代襲相続には注意が必要です。相続人は養子でも実子と同じ相続権があります。

しかし、養子の子は養子縁組後に生まれた子のみが代襲相続できます。養子縁組前に生まれた養子の子は、被相続人との血族関係にないとされ、代襲相続できません。

<代襲相続人の範囲>
実子の子 代襲相続人になる
養子の子 養子縁組前に生まれた子(孫) 代襲相続人にならない
養子縁組後に生まれた子(孫) 代襲相続人になる

孫への土地相続は税理士に相談を

孫への土地の相続は、早めの計画が大切です。他の相続人とのバランスを考慮することで、あとあとのトラブルを防げるでしょう。生前贈与をする場合には、贈与税や相続税負担を加味した慎重な判断が必要です。

土地の相続については、税理士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる