遺産相続の基本 2020/8/5

相続の期限はいつまで?期限で見る遺産相続手続きの流れ

相続の期限はいつまで?期限で見る遺産相続手続きの流れ
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「遺産相続手続きは、いつまでにすればいい?」「手続きによって期限が決まっている?」「期限に遅れたらペナルティがあるの?」「期限に間に合わせるにはどうしたらいい?」など、初めてだらけの遺産相続手続きに、遺族が戸惑う事も多いでしょう。 遺産相続手続きの中には法的に期限のあるものと、ないものがあります。期限も3カ月から無期限と、手続きによってそれぞれ異なり、期限内に行わないと思わぬ不利益が生ずることもあります。遺産相続手続きで困ったら、税理士などの専門家へ相談しましょう。

期限間近!相続開始後すぐに行うべき手続き

まず、相続に関連した手続きの中で、期限が近く、すぐに行うべきものを紹介します。

  1. 死亡届の提出
  2. 銀行・金融機関口座の凍結
  3. 年金の停止手続き
  4. 健康保険証・高齢受給者証の返却
  5. 遺言書の確認
  6. 相続人の確認

死亡届の提出は死後7日以内に

死亡届の提出は、親族か同居者、家主等が行います。死亡したことを知った日から(知った当日も含め)7日以内に死亡した場所か死亡した方の本籍地、届出人の住所地の中のどれかの市区町村役場へ届け出ることとなっています。7日目にあたる日が市町村役場の閉庁日だった場合は、次の開庁日が届け出期限となります。
国外で死亡した場合は、死亡の事実を知った日から3カ月以内に届け出をします。その他正当な理由がなく届け出が遅れた場合は、戸籍法によって5万円以下の過料を徴収されます。

死体火葬許可申請書がないとお葬式ができない?

死亡届と合わせて提出するのが、死体火葬許可申請書です。火葬許可証がないと火葬の日程がたたず、お葬式の日取りも決められませんから、手続きはすみやかに行いましょう。

口座はすみやか凍結して使い込みを防ぐ

相続トラブルを防ぐためにも、金融機関に連絡をして亡くなった方(被相続人)の取引を止めてもらいましょう。期限はありませんが、放っておくと相続人の1人が預金を引き出して持ち逃げしてしまうなどのリスクがあります。
また、被相続人の通帳やカードを預かっていたからといって勝手に預金を引き出したりすると、あとあと大きなトラブルになりかねませんので注意しましょう。

どうしても亡くなった方の預金を引き出す必要がある場合には?

葬儀費用が捻出できないなどの理由で、緊急に現金が必要なケースもあるでしょう。

ですが、銀行は利用者の死亡を知った時点で口座を凍結しなければいけませんから、遺族は凍結するか否かを選択できません。
どうしても現金の払い出しが必要な際には、相続人全員の同意を得たうえで必要書類をそろえ、手続きをします。

年金受給者死亡届は10日(国民年金は14日)以内に

亡くなった方が年金を受給していた場合、死亡届を提出して年金の支給を止めないと、あとで返還しなければなりません。故意でなくとも不正受給を疑われてしまう可能性もあります。
また、遺族年金を受け取れる可能性もありますから、忘れずに手続きをしましょう。

厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は14日以内に年金事務所などで手続きをします。
未支給年金の請求や、死亡一時金請求など、故人の年金に関する手続きも一緒にしておきましょう

健康保険証の返却は14日以内に

亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合は、死亡後14日以内に健康保険証を返却しなければなりません。世帯主が亡くなった場合は新しく世帯主となる方が世帯全員分の保険証を持っていき、手続きをします。
70歳~74歳の方が亡くなった場合は、高齢受給者証も返却します。

会社員など、勤務先の健康保険に加入している場合には、勤務先へ保険証を返却します。もしも扶養していた家族がいる場合には、その家族は別の家族の被扶養者となるか、自分で国民健康保険に加入しなければいけません。

遺言書の確認は死後1ヶ月前後をめどに

特に期限はありませんが、遺言書の確認はなるべく早く行いましょう。遺産分割協議の後に遺言書が見つかったことでやり直しになったり、遺言書の確認が遅れてその他の期限のある手続きが間に合わなくなる可能性があるためです。必要があれば、検認も早めに行いましょう。

遺言書の確認とあわせて、相続財産の調査も行いましょう。
相続財産が実際にどれくらいあるのか、負債はないかなどを把握し、財産目録を作成します。

相続人の確認もなるべく早く

こちらも期限はありませんが、相続人はなるべく早く確定させましょう。亡くなった方の戸籍を調査して、養子縁組や隠し子がなかったかなどを調べます。相続人が1人でも欠けていたことが判明すると遺産分割協議は無効となってしまいます。

<相続開始後すぐに行うべき手続き>

手続き 期限 提出先など
死亡届 7日以内 死亡場所・死亡した方の本籍地・届出人の住所地の中のいずれかの市区町村役場
死体火葬許可申請書 死亡届と一緒に 死亡届と一緒に
口座凍結 特にないが早めに 被相続人が口座を所有している金融機関など
通夜・葬儀・火葬・埋葬 (通常は数日以内に行う)
年金受給者死亡届 厚生年金10日以内・国民年金14日以内 年金事務所または年金相談センター
健康保険証の返還 14日以内 勤務先または住所地の市区町村役場
遺言書の確認・検認 期限はないが1カ月以内をめどに 公証役場・自宅の書斎・貸金庫・知人などにあずけている場合も
相続人の確認 期限はないが1カ月以内をめどに 死亡時の本籍地からさかのぼって戸籍を調べていく

期限のある相続手続き

相続手続きのうち、すぐの対応ではないものの、期限のある手続きをご紹介します。

  • 相続放棄
  • 準確定申告
  • 相続税の申告
  • 遺留分減殺請求
  • 健康保険の埋葬料・葬祭費支給(2年以内)
  • 国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
  • 生命保険金の請求(3年以内)

相続放棄は3カ月以内に!

負債が多いなら相続放棄

相続財産を調べたら負債の方が多かった」などの理由で相続放棄をする場合、相続人が相続開始を知った時から3カ月以内に手続きをしなければいけません。
この3カ月というのは熟慮期間といって、単純相続・限定承認・相続放棄の中から相続の方法を選択するための期間です。

何も手続きをしないと単純相続として、その相続人の相続分は負債も含めてすべて相続する選択をしたことになります。

資産と負債のどちらが多いか不明なら限定承認

相続財産を調べて財産目録を作成しても、確認しきれなかった負債がある可能性もあります。また、相続財産全体で、資産と負債のどちらが多いのか、容易に判断できないこともあり得ます。
その場合は限定承認といって、負債は相続した範囲内でのみ負担するという方法をとることができます。
限定承認には相続人全員の同意が必要で、相続放棄と同じく相続人が相続開始を知った時から3カ月以内に手続きをしなければいけません。

準確定申告の期限は4カ月以内

準確定申告とは、亡くなった方の、亡くなった年の分の確定申告です。準確定申告は、相続人が申告して納税する義務があります。申告期限は相続人が相続開始を知った日の翌日から4カ月以内です。翌年の確定申告期間に行うわけではありませんから、気を付けましょう。

自営業者など、確定申告が必要だった方が亡くなった場合には必要な手続きですが、会社員で確定申告が不要な場合などは、準確定申告の必要はありません。
「準確定申告の必要があるか」「その場合の納税額はいくらか」など、不明な点は税理士へ相談するとよいでしょう。

相続税の申告期限は10ヶ月以内

相続税がかかる場合には、相続人が相続開始を知った時から10カ月以内に相続税の申告と納付をしなければなりません。
相続人が複数いる場合には、相続財産の分割を終えていなければ相続税の申告もできませんから、遺産分割協議を終えている必要があります。
遺産分割協議が進んでいなかったとしても数族税の申告期限は変わりませんから、注意が必要です。

相続税には基礎控除がありますので、相続税がかからないことも多くあります。ただし少しでも納税義務があれば、期限を過ぎると延滞税が生じてしまいます。
また相続税には、さまざまな軽減措置がありますので、「相続税がかかるのか」「相続税を安くできないか」などの不明な点は税理士に相談することをおすすめします。

遺留分の減殺請求をする場合は1年以内に

法定相続人の権利として遺留分を取り戻したい場合は、遺留分権利者が贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に遺留分の減殺請求をします。法定相続人が遺留分の権利があることを知らなくても、相続開始から10年を過ぎると時効となり請求できません。

2年以内に請求しないともらえなくなるもの

健康保険から埋葬料・葬祭費が支給される

健康保険に加入していた方が亡くなった場合(本人・家族)、埋葬料・葬祭費が支給されます。
国民健康保険は数万円(自治体によって異なります)程度、会社などの健康保険組合に加入していた場合は5万円が支給されます。
請求できるのは2年以内ですが、健康保険証の返還時にあわせて手続きしておくとよいでしょう。

国民年金の死亡一時金請求

国民年金では、3年以上保険料を納めていた方が年金を一度も受け取らずに亡くなった場合、遺族に死亡一時金が支払われます。(一定の要件を満たす遺族に限ります)期限は死亡から2年以内です。

生命保険金の請求は3年以内に

生命保険金は3年で請求権が時効となります。ですから、3年以内に保険金の支払いを受けましょう。また、受取人が死亡を知らなかったケースなどでは3年を超えた場合でも保険金を支払ってもらえる可能性があります。

手続き 期限 提出先など
限定承認・相続放棄 相続人が相続開始を知った時から3カ月以内 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
準確定申告・納付 相続人が相続開始を知った日の翌日から4カ月以内 被相続人の住所地を管轄する税務署
相続税申告・納付 相続人が相続開始を知った日の翌日から10カ月以内 被相続人の住所地を管轄する税務署
遺留分減殺請求 相続人が相続開始を知った時から1年以内 遺留分を侵害している相手
埋葬料・葬祭費の請求 2年以内 市区町村また保険組合・社会保険事務所
国民年金の死亡一時金請求 2年以内 年金事務所または年金相談センター
生命保険金の請求 3年以内 生命保険会社

期限はないが手続きが必要なもの

相続手続きの中には、期限はないものの必要な手続きもあります。期限がないからといって先延ばしにしていると、遺産分割や相続税申告で問題となるケースもあるので、早めの手続きをおすすめします。

  • 遺産分割協議
  • 不動産の相続登記

遺産分割協議は相続税の申告期限までに済ませておく

相続税の申告期限は、相続人が相続開始を知った時から10カ月以内ですから、少なくともそれまでには遺産分割協議を終えておく必要があります。
遺産分割協議は必ずしも必要な手続きではありませんから、相続人が1人だけのケースや、特に遺産分割協議を必要としない相続の場合には行いません。

不動産の相続登記

不動産の相続登記には期限がありません。相続登記をしなくてもペナルティがないため、そのままになっている不動産もたくさんあります。
ただし、相続登記をしておかないと、次の相続で遺産分割が複雑になったり、相続登記をすませていないことで不動産を有効活用できないなどの不利益が生ずる可能性がありますので、できるだけすみやかに手続きをしておいたほうがよいでしょう。

遺産相続手続きに困ったら税理士に相談を

遺産相続には、期限が短く複雑でわかりにくい手続きが多くあります。また、期限内に手続きを終えないと、もらえるはずの財産が手に入らなくなったり、請求権が失効したり、延滞税がかかったりと、さまざまな不利益が生じてしまいます。

遺産相続の手続きは税理士などの専門家へ相談し、すみやかに行うことをおすすめします。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる