税理士の選び方 2022/9/1

相続対策に強い、良い税理士の選び方

相続対策に強い、良い税理士の選び方
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身内が亡くなり相続の相談をしたい、そんなときに頼りになるのが税理士です。しかし日頃税理士との付き合いがない場合には、どんな人に依頼したらいいのか悩みます。税金や相続後の手続きについて、安心して相談できるのはどんな税理士でしょうか。スムーズな相続税申告のために、相続に強い、良い税理士選びのポイントを整理しておきましょう。

税理士なら誰でも相続に詳しいわけではない?!

税理士は国家資格を得て税務の独占業務などを行う職業ですから、すべての税理士が相続税のエキスパートかと思われがちです。しかし必ずしもそうではありません。その理由には次のようなことがあげられます。

税理士試験に合格していなくても税理士になれる?

難関な税理士試験を突破する以外にも、税理士になる道があります。税理士試験は会計学に関する2科目、税法3科目の合計5科目の試験に合格する必要がありますが、次の場合には税理士試験の一部または全部が免除されます。その結果、相続税に詳しくなくても税理士資格を取ることが可能です。

修士・学士取得を取得すると試験の一部が免除される

大学院で会計学や税法を学び修士論文が国税庁に認定された場合には、研究する科によって会計科目の1科目、または税法科目の2科目が免除されます。つまり場合によっては、残り3科目に合格すれば税理士資格を取得できます。その3科目の一つに相続税を選択する必要はありません。

税務署勤務経験で試験の一部または全部が免除される

従事した職種により、10年または15年以上税務署勤務を経験した人は、税理士試験5科目のうち税法3科目が免除されます。そして同様に23年または28年以上税務署に勤務し、指定研修を終了した人はすべての試験が免除されます。

税務署職員なら、すべての税目に詳しいのではないかと思ってしまいます。しかし勤務していた部署が資産課税部門でなければ、必ずしも相続税に強いとは限らないようです。

公認会計士は税理士を名乗れる

公認会計士、弁護士資格に合格すれば、税理士登録をすることができます。司法試験にパスして税理士になる人は少ないようですが、登録税理士の約1割が公認会計士の資格取得者だと言われています。公認会計士は会計のプロで、試験においても税法全般についてはそれほど詳しい知識を求められません。

そして税理士資格を取得して税理士登録する場合には、2年間の実務経験が必要ですが、公認会計士や弁護士にはそれがありません。つまり公認会計士であれば、相続税に関する知識や経験が乏しくても、税理士として開業できてしまいます。

参考:税理士になるには?必要資格や向いている人の特徴などを具体的に解説

税理士試験では相続税が必須科目ではない

では5科目すべての科目について勉強し、合格した税理士ならば相続税に詳しいかというと、この場合も必ずしもそうとは言えません。簿記論と財務諸表論の会計2科目は必須ですが、税法3科目については法人税と所得税から最低1科目、相続税、消費税、住民税、事業税、固定資産税、酒税から2科目を選択することができます(消費税と酒税、住民税と事業税はどちらか一方しか選べません)。

つまり難関の税理士試験を突破している場合でも、相続税科目に合格しているかどうかはその人の選択によります。受験科目に相続税を選んでいないからと言って相続に詳しくないと言い切ることはできませんが、相続を専門としていく人は受験の時点で相続税を選択する傾向があるようです。

税理士事務所での経験の違い

税理士資格を取得して税理士登録をするためには、最低2年間の実務経験が必要です。相続税に詳しいかどうかは、経験をどんな税理士事務所で積んだかということにも影響されます。

税理士事務所の多くが会社や個人事業主を主なクライアントとし、法人税と所得税を得意分野としています。相続税申告の案件がほとんどない事務所でキャリアを積んだ場合には、経験が充分でないために相続税に詳しくないことがあります。

相続税申告で依頼者にとって良い税理士とは?

税理士になるには複数のルートがあり、各税理士によって得意分野があります。相続税の申告を頼むなら、相続税を得意としている税理士が安心です。そして依頼者にとって良い税理士を選ぶポイントには、他にもいくつかあります。

節税対策をしてくれる

依頼者側からすると、節税対策をしてくれるのが当たり前のように思いますが、税理士によっては申告業務しか行わない人もいます。依頼する税理士によって納税額が大きく異なる理由が、ここにあります。複数の節税対策を提案してくれる税理士が望ましいです。

税務調査に強い

相続税は、他と比べても税務調査が入る確率が非常に高い税目です。申告業務だけでなく、その後の税務調査にもしっかりと対応してくれる税理士が、依頼者にとって良い税理士と言えます。具体的には、税務調査で税務署の指摘に納得がいかない場合に、依頼者に代わってきちんと主張してくれる税理士です。

相性がいい

遺産分割や財産の評価など、ナイーブな問題を任せることになりますし、数ヶ月から数年のお付き合いとなるため、税理士との相性は思いのほか重要です。口コミやホームページの印象だけを頼りにせず、実際に会ってみて信頼できる人柄かどうかを確認することが大切です。

他の士業とのネットワークがある

遺産分割がスムーズに行われるとは限らず、争いになってしまうケースもあります。そうなると手続きが進まなくなるばかりか、分割の仕方によっては税額が大きく違ってきます。トラブルを解消しつつ節税をするには、弁護士と連携がある税理士に相談するのが近道です。

また不動産を相続した際には、相続登記が必要です。弁護士だけでなく司法書士ともつながりのある税理士なら、遺産分割、相続税申告、相続登記までワンストップで依頼することができます。他にも不動産鑑定士や土地家屋調査士など、士業同士の幅広いネットワークを持つ税理士なら、依頼者にとって心強いです。

相続に強い税理士の見分け方

税理士を探す場合、多くの人がインターネット検索や知り合いからの紹介という方法を取るでしょう。いずれの場合でも、相続に強い税理士に依頼するためには、以下の点についてチェックしておきたいところです。

相続税申告の件数と経験年数

相続税に強い税理士かどうかを図る指標の一つが、経験の豊富さです。相続税の年間申告件数や、税理士としての経験年数を確認しましょう。

相続専門とうたっている大規模な税理士法人などであれば、年間100件以上が目安です。中・小規模の税理士事務所であれば、年間20件以上の申告件数があれば経験豊富と言えます。そして経験年数は、10年以上あれば安心して依頼できるでしょう。

報酬の見積もり提示があるか

ホームページ上で報酬体系が明示されており、さらに手続きを開始する前に報酬の見積もりを提示してくれるかどうかも、重要なポイントです。相続税申告業務に慣れている税理士であれば、相談された案件についておおよその手間や時間がかかるかがわかるので、概算金額を提示できます。申告後に報酬の額でもめないためにも、相談の段階で見積もりを取るようにしましょう。

説明のわかりやすさ

節税対策はどのようにしてくれるのか、税務調査が入ったらどのように対応してくれるのか、他の士業とのネットワークがあるかなど、正式に依頼する前に税理士に実際に会って話を聞くことが大切です。その際に注目したいのが、説明のわかりやすさです。

相続税は税理士にとっても難しい税目です。それをわかりやすく説明してくれるかどうかで、依頼者側の信頼感や安心感が違ってきます。つまりは相性の良し悪しにつながります。もしその税理士が相続に関するWebコラムやブログなどを書いているのであれば、そこから人柄をうかがい知ることもできるので、積極的に読むことをおすすめします。

相続税申告を依頼する税理士選びは慎重に

相続税の申告はそう何度もあることではなく、依頼する税理士によって税額が大きく違うことから、税理士選びは慎重にする必要があります。よその家で評価が高い税理士が、自分たち家族にとっても良い税理士とは限りません。口コミやインターネット上の評判だけで選ばず、自分たちの要求を満たしてくれるかどうかをしっかりと確認することが重要です。

また節税の観点から言えば、相続が始まってから慌てて税理士に相談するようでは遅いことがあります。いざというときのために、信頼できる税理士を前もって探しておくといいでしょう。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる