遺産分割 2020/12/24

孫でも相続の遺留分は請求できる?可能なケースと請求時の注意点

孫でも相続の遺留分は請求できる?可能なケースと請求時の注意点
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祖父母の死亡とは関係がないように思える孫ですが、代襲相続人となった場合には、相続財産の遺留分を請求できます。代襲相続が発生する相続をスムーズに進めるには、各相続人の遺留分の割合を把握することが必要です。

孫は遺留分を請求できる?

祖父母が死亡したとき、相続するはずの親(祖父母の子)が既に死亡していることもありますよね。
遺言により叔父や叔母(祖父母の子)などがすべて相続することになっている場合に、孫には遺留分を請求する権利はあるのでしょうか?

遺留分とは

遺留分とは、一定の法定相続人が請求できる最低限の遺産の取り分です。

遺留分とその請求方法については下記の記事で詳しく解説しています。

代襲相続人の孫は遺留分請求ができる

遺留分制度の重要な目的の一つに、相続人の生活保障があります。そのため、「被相続人(祖父母)に養育される立場ではない孫には権利がないのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、代襲相続人の孫にも子と同じように遺留分請求権があります。
親が死亡していることにより代襲相続する場合、相続権とともに遺留分請求権も取得するからです。

祖父が死亡(祖母は既に死亡している)した場合の法定相続人

  • 叔父(祖父の長男)
  • 叔母(祖父の長女)
  • 母(祖父の次女・既に死亡) → 孫が代襲相続人に

代襲相続で遺留分請求ができないケース

被相続人に子がなく、兄弟姉妹が法定相続人となった場合は、遺留分は請求できません。そのため、被相続人の兄弟姉妹が死亡していることにより兄弟姉妹の子(被相続人からみた甥・姪)が代襲相続するケースでは、姪や甥は遺留分請求権を取得しません。

被相続人に子がいない(両親や祖父母も既に死亡している)場合の法定相続人

  • 配偶者
  • 兄(遺留分なし)
  • 姉(既に死亡) → 姪が代襲相続人に(遺留分なし)

孫が遺留分を請求できるケースと割合

それでは孫が遺留分を請求できるケースと、 取得できる割合について見ていきましょう。

被相続人の子が死亡して孫が代襲相続

被相続人の子が既に亡くなっていた場合には代襲相続が発生し、孫が法定相続人となります。
遺留分の割合は次のようになります。

相続人が配偶者と孫

相続人が配偶者と孫の場合では、孫の遺留分は相続財産全体の四分の一です。

相続人が配偶者と孫(1人)の場合の遺留分
相続人 配偶者
法定相続分 1/2 1/2
遺留分(法定相続分) 1/4 1/4

相続人が子と孫

相続人が子と孫の場合では、孫の遺留分は相続財産全体の四分の一です。

相続人が子(1人)と孫(1人)の場合の遺留分
相続人
法定相続分 1/2 1/2
遺留分(法定相続分) 1/4 1/4

相続人が配偶者と子と孫

相続人が配偶者と子と孫の場合では、孫の遺留分は相続財産全体の八分の一です。

相続人が配偶者と子(1人)・孫(1人)の場合の遺留分
相続人 配偶者
法定相続分 1/2 1/4 1/4
遺留分(法定相続分) 1/4 1/8 1/8

被相続人の子が相続廃除や相続欠格となり、孫が代襲相続

相続人に著しい非行があった場合などは相続廃除や相続欠格となり、相続権を失うことがあります。
被相続人の子が相続廃除や相続欠格になった場合は代襲相続が発生し、孫が法定相続人となります。
遺留分の割合は、子が既に亡くなっていた場合と同様です。

孫が遺留分を請求できないケース

代襲相続するはずの被相続人の孫は、遺言等により相続財産を取得できなくても遺留分を請求できます。
ただし、以下のような場合には遺留分を請求できません。

被相続人の子が相続放棄をした

相続廃除や相続欠格と違い、相続放棄をすると代襲相続はされません。そのため、被相続人の子が相続放棄をした場合には、孫は遺留分を請求できません。

相続放棄については、下記の記事で詳しく解説しています。

孫自身が相続廃除や相続欠格

代襲相続が発生しても、孫自身が相続廃除や相続欠格となれば遺留分の請求はできません。ただし、もしも孫に子(被相続人のひ孫)がいれば、ひ孫が再代襲します。

養子の子(養子縁組前に生まれた子)

被相続人の子が養子だった場合でも、代襲相続は発生します。
ただし、養子になったタイミングによっては、孫へ代襲相続されません。

子が養子になったあと生まれた孫

被相続人が子を養子にしたあとに生まれた養子の子(被相続人の孫)へは代襲相続されますので、実子の子と同じように遺留分を請求できます。

子が養子になる前に生まれた孫

被相続人が子を養子にする前に生まれた養子の子は、被相続人の直系卑属とはみなしません。養子との血族関係は養子縁組の日から生じるとされているため、養子縁組前に生まれた子とは血族関係がないとみなされるのです。

血族関係が認められないため、養子縁組前に生まれた養子の子は遺留分を請求できません。

養子の子と代襲相続
養子の子が生まれた時期 養子縁組前 養子縁組後
遺留分 請求できない 請求できる

遺留分請求をする場合の注意点

次に、孫が遺留分請求をする場合の注意点についてみていきます。

孫に兄弟がいる場合は取り分が減る

孫に兄弟がいる場合、請求できる遺留分は兄弟の人数で均等に分けます。つまり個々の取り分は減りますから注意しましょう。

他の兄弟が遺留分を請求しないからといって、兄弟の分も請求できるわけではありません。

遺留分請求の時効は1年

遺留分の請求には時効があります。相続の開始を知った日から1年または相続開始から10年です。期限内に遺留分を請求しなければ、請求の意思がないとみなされます。

つまり1年間何もしないままでいると、一切請求できなくなるのです。代襲相続の発生を知らないまま10年間が経ってしまった場合も同様です。

民法改正により金銭債権化された

遺留分の請求権については民法が改正され、金銭債権化されています。改正前とは取り扱いが大きく異なりますから注意しましょう。

改正前の遺留分請求

遺留分の請求は以前まで「遺留分減殺請求権」として、相続した財産そのものに対して請求ができるものでした。この制度では、遺留分を請求されると相続財産が共有状態となることで事業承継ができなくなったり、相続財産の処分が難しくなったりという問題がありました。

遺留分の請求が事業承継の支障になる例
遺留分の請求が事業承継の支障になる例:法務省資料より(PDF)

改正後の遺留分請求

民法改正(2019年7月施行)により、請求できる遺留分権は「遺留分侵害額請求権」とされ、金銭債権を請求できる権利になりました。

改正によるメリット
改正によるメリット:法務省資料より(PDF)

改正により、遺留分の支払いは財産の処分を経ず、すべて金銭で行えるようになりました。
財産の処分で孫兄弟の間で意見が別れる場合でも、遺産分割するためだけに財産を処分する必要はなくなりました。財産を単独で受け取った孫が、他の孫の遺留分に応じた金額を支払うことで問題を解決することができます。

遺留分の請求や相続税については税理士に相談を

遺留分の請求は代襲相続人となった孫も持つ権利です。叔父や叔母などの他の相続人に「相続分はない」と言われたとしても、最低限請求できる権利があることを覚えておきましょう。

遺留分を取得することで相続税がかかることもあり得ます。相続については税理士などの専門家へ早めの相談をおすすめします。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる