遺産分割 2018/11/13

遺留分の計算方法~遺留分減殺請求で取り返せる財産の割合

遺留分の計算方法~遺留分減殺請求で取り返せる財産の割合
このエントリーをはてなブックマークに追加

相続人が受け取る財産には『遺留分』という最低限保証される財産があります。被相続人による遺言がこの遺留分を侵害している場合、相続人は遺留分の減殺請求を行い、相続財産を取り戻すことができます。遺留分の計算は相続人が誰であるかによって割合が異なってくるので注意が必要です。今回の記事では遺留分の計算方法や遺留分減殺請求で取り返せる財産の割合を具体的な例で解説しています。

遺留分とは相続人の財産を最低限保証する制度

遺留分とは、民法で定められている「一定の相続人」に対して最低限確保される財産のことをいいます。

相続が発生すると「法定相続分」または「遺言」により財産が分配されます。しかしその遺言が偏った内容であるなどの場合、民法では相続人が最低限確保できる財産を「遺留分」として保証しています。

法定相続分とは

法定相続分は遺産を分割する際の法律による「目安」となります。

しかし必ずしも法定相続分により分割しなければならないというものではなく、遺言があればまず遺言による分割方法に従います。法定相続分はあくまでも「目安」です。

法定相続分と遺留分割合

「法定相続分」と「遺留分」の分割割合はイコールではなく異なります。それぞれ目的が法定相続分は遺産分割の目安、遺留分は相続人が最低限受け取る権利と異なっているためです。

目的が異なるので分割割合も異なります。まず「法定相続分」は次の割合で計算されます。

相続人が配偶者のみの場合の法定相続割合

相続人が配偶者のみの場合は100%配偶者の法定相続分となります。

相続人が配偶者と被相続人の子供の場合の法定相続割合

相続人が配偶者と被相続人の子供の場合、1/2配偶者、1/2子供の法定相続分となります。

子供は全体で1/2の割合ですので子供が2人いる場合には1/4ずつ、子供が3人いる場合にはそれぞれ1/6ずつの割合となります。

相続人が配偶者と被相続人の父母の場合の法定相続割合

相続人が配偶者と被相続人の父母の場合、2/3配偶者、1/3父母の法定相続分となります。

相続人が配偶者と被相続人の兄弟の場合の法定相続割合

相続人が配偶者と被相続人の兄弟の場合、3/4配偶者、1/4兄弟の法定相続分となります。

遺留分の割合

一方、「遺留分の割合」は法定相続分の割合とは少し異なります。

配偶者のみの場合や子供のみの場合、相続財産の1/2、父母のみの場合には相続財産の1/3の割合が遺留分として認められています。兄弟のみの場合には遺留分はありません。

それぞれ相続人が複数の場合には以下のような割合となります。

相続人が配偶者と被相続人の子供の場合の遺留分割合

相続人が配偶者と被相続人の子供の場合、1/4配偶者、1/4子供の遺留分となります。

相続人が配偶者と被相続人の父母の場合の遺留分割合

相続人が配偶者と被相続人の父母の場合、2/6配偶者、1/6父母の遺留分となります。

相続人が配偶者と被相続人の兄弟の場合の遺留分割合

相続人が配偶者と被相続人の兄弟の場合、1/2配偶者、兄弟には遺留分はありません

法定相続分と遺留分の違い

法定相続分と遺留分では分割割合に違いがあります。それぞれのケースで法定相続分と遺留分を比較すると次のようになります。

ケース別の法定相続分・遺留分

相続人 法定相続分 遺留分
配偶者のみの場合 1/1 1/2
子のみの場合 1/1 1/2
親のみの場合 1/1 1/3
配偶者と子の場合 配偶者 配偶者
1/2 1/2 1/4 1/4
配偶者と親の場合 配偶者 配偶者
2/3 1/3 2/6 1/6
配偶者と兄弟の場合 配偶者 兄弟 配偶者 兄弟
3/4 1/4 1/2 無し

配偶者と子、配偶者と親の場合には法定相続分に1/2をかければ遺留分割合は算出されますが、「配偶者と兄弟」の場合には兄弟の遺留分割合はありませんので注意が必要です。

遺留分の計算方法(基礎知識)

では遺留分の具体的な計算方法を確認したいと思います。まず確認するのは「遺留分の基礎となる財産」、その金額に「遺留分割合」をかけて遺留分財産の額を算定します。

遺留分算定の基礎となる財産を確認

遺留分を計算する際にはまず「遺留分の基礎となる財産」を確認します。「遺留分の基礎となる財産」とは、被相続人の財産に生前贈与した財産を加え、その額から債務を差し引いて算定したものをいいます。

この記事のポイント

遺留分算定の基礎となる財産の計算方法

遺留分算定の基礎となる財産=被相続人の財産+生前贈与した財産-債務

財産を遺留分で分割する

遺留分の基礎となる財産が確定したらその金額を先ほどの「遺留分割合」で分けます。

この記事のポイント

遺留分の計算式

遺留分=遺留分の基礎となる財産×遺留分の割合

遺留分の計算方法(具体例)

では具体的な3つのケースで遺留分の計算を確認したいと思います。

  1. 配偶者と子供2人が相続する場合の遺留分
  2. 配偶者と親が相続する場合の遺留分
  3. 配偶者と故人の兄弟が相続する場合の遺留分

配偶者と子供2人が相続する場合の遺留分

相続人 妻、長男、長女
遺産総額 1億円
生前贈与(相続開始1年以内) 2000万円
債務 3000万円

手順① 遺留分の基礎となる財産を確認します。
1億円+2000万円-3000万円=9000万円

手順② 遺留分の基礎となる財産を遺留分割合で分けます。

9000万円×1/4=2250万円・・・妻
9000万円×1/8=1125万円・・・長男
9000万円×1/8=1125万円・・・長女

今回の遺留分は妻、2250万円、長男1125万円、長女1125万円となりました。

妻と子供の遺留分の合計は1/2です。今回は子供が2人いるので子供の割合である1/4を更に2人で分け、長男1/8、長女1/8の割合となっています。

この記事のポイント

配偶者と子供の遺留分

配偶者と子供の遺留分は合計で1/2となります。

配偶者と親が相続する場合の遺留分

相続人 妻、親
遺産総額 1億円
生前贈与(相続開始1年以内) 2000万円
債務 3000万円

手順① 遺留分の基礎となる財産の算定
1億円+2000万円-3000万円=9000万円

手順② 遺留分割合の算定
9000万円×2/6=3000万円・・・妻
9000万円×1/6=1500万円・・・親

今回の遺留分は妻、3000万円、親1500万円となります。

この記事のポイント

配偶者と親の遺留分

配偶者と親の遺留分は合計で1/2となりますが、配偶者の方が遺留分を多く持ちます。

配偶者と故人の兄弟が相続する場合の遺留分

相続人 妻、兄
遺産相続 1億円
生前贈与:(相続開始1年以内) 2000万円
債務 3000万円

手順① 遺留分の基礎となる財産の算定
1億円+2000万円-3000万円=9000万円

手順② 遺留分割合の算定
9000万円×1/2=4500万円・・・妻

この記事のポイント

兄への遺留分

兄弟への遺留分はないので兄への遺留分はありません。

遺留分が侵害されているケース

例えば、ケース①で仮に遺言書で「長男に2000万円、長女に250万円相続する」旨が書かれていた場合、長女は遺留分が1125万円あるので、差額の875万円を遺留分として請求することができます。

遺留分減殺請求の計算

1125万円-250万円=875万円

特別受益がある場合の遺留分の計算方法

相続人が被相続人から生前に結婚資金や住宅資金などの理由により贈与を受けていた場合、それらの贈与は特別受益としてみなし相続財産に加算されます。

また遺留分を計算する際には、特別受益を受けた人はご自分の遺留分から受け取った特別受益額を控除する必要があります。

特別受益がある場合の具体例

相続人 妻、息子
遺産総額 1億円
特別受益 2000万円(息子へ)

手順① 特別受益をみなし相続財産へ加算
1億円+2000万円=1億2000万円

手順② 遺留分の算定
1億2000万円×1/4=3000万円・・・妻
1億2000万円×1/4-2000万円=1000万円・・・息子

この場合、妻の遺留分は3000万円、息子の遺留分は特別受益2000万円を控除した1000万円となります。

この記事のポイント

特別受益と遺留分

遺留分割合から特別贈与額を控除します。特別贈与額が遺留分割合を超える場合には遺留分を主張することはできません。

遺留分減殺請求をする方法

遺留分が侵害されていて「遺留分減殺請求」をする場合にはまず、遺留分減殺通知書を送付します。口頭でも可能ですが、「内容証明郵便」で送ることによって送ったという証拠を残すことができます。

遺留分減殺請求書に記載する内容

遺留分が侵害され「遺留分減殺請求」をしたい場合にはまず「遺留分減殺請求書」を作成する必要があります。特に書式は決まっていませんが、最低限以下のような内容が含まれている必要があります。

  • 被相続人の名前
  • 遺留分を侵害している遺言の内容
  • 遺留分が侵害されたことを知った日
  • 遺留分権利者の名前
  • 遺留分減殺請求を行使する旨

「内容証明郵便」で送る場合、文字数などの制限があるので注意が必要です。

※内容証明では1行20文字以内、26行以内での記載となります。

遺留分減殺請求書記載例

遺留分減殺請求書には決まった書式はありませんが、以下のような文面で請求することができます。

遺留分減殺請求書サンプル文

「通知人は被相続人○○○○がその遺産の全てを被通知人に相続させる旨の遺言を残していたことを平成〇年〇月〇日に知りました。しかし、通知人には遺留分が相続財産の○分の○あり、遺言書の内容は通知人の遺留分を侵害しています。つきましては、通知人は被通知人に対して本書面をもって遺留分減殺請求をいたします。」

※内容証明として提出する際には3通準備する必要があります。1通は郵便局、1通は相手方、1通はご自身の控えとなります。

遺留分減殺請求をするための準備書類

遺留分減殺請求を始めるにあったって以下の書類を準備しておきましょう。

遺留分減殺請求に必要な資料

  1. 被相続人・申立人・相手方それぞれの戸籍謄本、住民票等
  2. 遺産目録・当事者目録
  3. 遺留分減殺請求内容証明の控え

これらの書類は今後話し合いがまとまらず「調停」や「訴訟」へと進んでいった場合にも提出が求められるので、事前に準備しておくと良いでしょう。

当人同士で合意に至らなかった場合

遺留分の減殺通知書を送付して当人同士での話し合いを行っても合意に至らなかった場合、家庭裁判所で「遺留分減殺調停」を行います。

遺留分減殺調停では、家庭裁判所の調停委員会に間に入ってもらい遺留分の割合について話し合いを行います。

遺留分減殺調停をするためには「遺留分減殺調停の申し立て」を行う必要があります。申し立ては相手の住所地の管轄の家庭裁判所で行います。

遺留分減殺調停に必要な書類

遺留分の減殺調停では以下の書類が必要となります。

遺留分減殺調停に必要な資料

  1. 遺産分割調停申立書
  2. 当事者目録
  3. 物件目録(土地)
  4. 物件目録(建物)
  5. 申立人の戸籍謄本・住民票
  6. 被相続人の除籍謄本・原戸籍謄本(出生から死亡まで)
  7. 不動産の登記簿謄本・固定資産税評価証明書(不動産がある場合)
  8. 預貯金の現在の残高証明書や通帳写し(預貯金がある場合)

申立書、当事者目録、物件目録は裁判所や裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

この遺留分減殺調停でも話がまとまらない場合には「遺留分減殺訴訟」が行われます。遺留分減殺訴訟では別に「訴状」の提出が必要となります。

遺留分減殺請求の時効

遺留分減殺請求には時効があるので注意が必要です。遺留分減殺請求の時効は次の2つのいずれかの場合に時効が成立します。

  • 遺留分の侵害を知った時から1年間
  • 相続開始の時から10年

この記事のポイント

遺留分減殺請求の時効成立はいつ?

遺留分減殺請求の時効は「知ってから1年」または「相続から10年

遺留分の放棄

遺留分のある相続人は相続の開始前(被相続人の生存中)に、被相続人が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所の許可を得てあらかじめ遺留分を放棄することができます。

遺留分の放棄が認められると放棄した者の遺留分はなくなりますので、「遺留分減殺請求が発生する心配」から解放されるなどのメリットがあります。

相続人が「なぜ遺留分の放棄を行うか」ですが、実際に遺留分の放棄を行うケースでは、生前に遺留分を放棄する者が遺留分放棄に対しての「何らかの見返り」を受取ることによって遺留分の放棄が行われます。遺留分を放棄する場合には本人の合意が必ず必要となります。

もちろん「相続発生後」にも遺留分を放棄することができます。この場合には家庭裁判所の許可は必要ではありません。

この記事のポイント

遺留分の放棄をする際の注意点

一度遺留分の放棄を行うと原則それを撤回することはできません。

まとめ:遺留分の計算方法~遺留分減殺請求で取り返せる財産の割合

今回の記事では遺留分の計算方法、遺留分減殺請求を行うことによって取り返せる財産の割合についてご紹介しました。ポイントは以下の6つです。

  • 「遺留分」の割合は「法定相続分」とは異なります。
  • 遺留分割合は配偶者や子供は1/2、親は1/3、兄弟に対しての遺留分は認められていません。
  • 遺留分算定の基礎となる財産は被相続人の財産+生前贈与した財産-債務
  • 遺留分と遺言の内容の差額を遺留分減殺請求できます。
  • 遺留分減殺請求の期限は相続を知った日から1年または相続開始から10年
  • 遺留分減殺請求で話がまとまらない場合、遺留分減殺調停、訴訟となります。

遺留分の算定に当たっては「基礎となる財産の算定」、「遺留分割合の算定」を最低限行う必要となります。

ご自分で行うことも可能ですが、実際に遺留分減殺請求を行うとなると相続人同士でトラブルとなる可能性が非常に高くなりますので、税理士などの相続の専門家に相談することをお勧めします。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる