遺産相続の基本 2019/6/4

遺言書がない場合の相続~遺産分割・相続の進め方と注意点

遺言書がない場合の相続~遺産分割・相続の進め方と注意点
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故人の希望を尊重した相続をしたいと考えていても、遺言がなければ実現できません。「遺言書がないので、どうしたらよいかわからない。何から手をつけたらよいかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。ここでは、遺言書がない場合の相続の進め方と遺産分割の注意点について解説します。

遺言がない相続手続きの進め方

遺言のない相続手続きでは、まず相続人を確定します。そして相続人が複数存在する場合には、遺産の分割について話し合いをします。

話し合いが決裂した場合は、調停や審判で遺産分割をすることもあります。

1.遺言が本当にないか確認

遺族が遺言書の所在を知らなくても、相続手続きを始める前に遺言が本当に存在しないか、確認しましょう。遺族の知らないうちに遺言書を作成している可能性も否定できないからです。

公正証書遺言なら日本公証人連合会の遺言書検索システムが利用できます。自筆証書遺言は保管場所がわかりませんから、まずは自宅などから探していきます。知人や弁護士、信託銀行などに預けている場合もありますから、生前付き合いがあった関係先に問い合わせましょう。

遺言書が見つかったら、その遺言が有効かの確認もあわせて行います。

2.法廷相続人の確定

次に、法廷相続人の確定をします。家族だからといって故人の相続人すべてを把握しているとは限りません。婚姻前に認知していた子や、音信不通の両親や兄弟がいるかもしれないのです。

法定相続人について、詳しくは後述します。

3.相続財産と債務の確認

故人の遺した財産と、債務のすべてを確認します。相続財産は預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナス財産も含みますので全体を把握する必要があります。

4.単純承認・限定承認・相続放棄

法廷相続人は、相続するか否かを選択できます。普通に相続をする場合は単純承認といいますが、単純承認を選んだことによる手続きは特に必要ありません。限定承認か相続放棄を選択する場合には、家庭裁判所での手続きが必要です。

相続放棄をしたい相続人は一人で手続きができますが、限定承認は相続人全員で手続きをしなければなりません。

相続放棄

相続放棄とは、相続権自体を放棄することです。債務が多いケースや、故人や他の相続人との関係がよくない場合などに選択することがあります。

限定承認

限定承認とは、プラスの財産を超えない範囲でマイナスの財産を相続することです。資産や負債の全容が把握しきれない場合に有効です。

5.相続人間で協議(遺産分割協議)

相続人と相続財産が確定したら、相続人同士で話し合いをします。これを遺産分割協議といいます。基本的には相続人間の話し合いで遺産の分け方を決めますので、相続人全員が同意すれば相続人のうち一人がすべてを相続するような分け方も可能です。

また、実際に話し合いを行わなくても、代表者が遺産分割方法を提案し、他の相続人全員が同意することでも成立します。相続人が一人のみの場合には遺産分割協議は必要ありません。

遺産分割調停

話し合いが決裂した場合や、協力的でない相続人がいる場合には、家庭裁判所へ調停を申し立てることができます。調停委員が間に入ることで、協議がまとまりやすくなります。

遺産分割審判

調停が不成立に終わった場合は自動的に審判手続きが開始されます。遺産分割審判では、審理の上、審判官(裁判官)がどのように遺産分割をするか決定します。

6.遺産分割

遺産分割方法が決まったら、実際に名義変更などを行います。預金口座の名義変更、株式の名義替え、不動産の相続登記などです。

7.相続税申告と納付

相続税の基礎控除額を超える相続財産を取得した際は、相続税の申告と納付をします。各種控除によって相続税がかからない場合でも申告は必要です。

遺言相続(指定相続)と法定相続の違い

相続手続きの方法には、遺言相続と法定相続があり、遺言相続は指定相続よりも優先されます。

遺言相続とは

遺言による相続は、遺言相続(指定相続)と呼ばれ、一定の遺留分はあるものの、基本的には故人の指定する方法で行われます。

遺留分

遺言相続による相続手続きでも、配偶者・子(直系卑属)・両親(直系尊属)には一定割合の取り分を請求する権利が保証されており、これを遺留分といいます。

法定相続とは

法定相続とは、遺言がない場合に行う相続手続きです。遺産分割協議で遺産の分割方法を決定しますが、相続人全員が同意しないと協議がまとまりません。

遺産分割協議が難航した場合は調停へ、調停が不調に終わったら審判へとすすみます。審判では法定相続割合による分割が基本です。

法定相続人とは

遺産分割協議の成立には、相続人全員の同意が必要です。ここでは法定相続人についてみていきます。

法定相続人の範囲

法定相続人になる可能性があるのは、配偶者・子・孫・両親・祖父母・兄弟姉妹・姪甥などです。法廷相続人には順位があり、順位が上の相続人が存在する場合には、相続人になりません。

法定相続人の順位

配偶者には順位はなく、いつでも相続人になります。

その他の相続人の順位は次の通りです。

  1. 第一順位
    直系卑属(自分より後の世代で直系の親族)子や孫など
    子が死亡している場合孫へ、子も孫も死亡している場合はひ孫へ、と代襲相続される
  2. 第二順位
    直系尊属(自分よりも前の世代で直系の親族)父母・祖父母など
    父母のどちらも死亡している場合は祖父母が第二順位の相続人
  3. 第三順位
    兄弟姉妹
    兄弟姉妹が死亡している場合は姪甥へ代襲される(再代襲なし)

第一順位の相続人がいる場合、第二・第三順位の人は相続人になりません。第一順位の相続人が存在せず、第二順位の相続人がいる場合、第三順位の人は相続人になりません。

子がすでに死亡していても、子の子(孫)がいれば代襲相続され第一順位の相続人になります。子も孫も死亡していてもひ孫がいれば再代襲されます。

これに対し第三順位の相続人に再代襲はありません。兄弟姉妹も姪甥もすでに死亡している場合、姪甥の子は相続人になりませんから、第三順位の相続人はいないことになります。

順位が上の法廷相続人が相続放棄をした場合

順位が上の法廷相続人が相続放棄をすることで、その下の順位の人が相続人になるケースもあります。相続放棄をすると代襲相続もされないことに注意してください。また、相続放棄ではなく、相続欠格の場合は代襲相続されます。

遺言のない相続の注意点

被相続人の指定がない分、遺産分割協議が重要に

遺言相続では遺族個々の事情や相続税負担を考慮した分割方法を指定していることも多いですが、遺言がない場合の法定相続ではそうはいきません。

法定相続では、法律に従った分割割合が基本です。「家を手放したくない」「どうしても取得したい遺産がある」「税負担を軽減するための策を講じたい」などの事情がある場合は、遺産分割協議で他の相続人に同意してもらう必要があります。

このようなことから、遺言のない相続では遺産分割協議をスムーズに進めることが重要です。

遺言のない相続は税理士に相談を

遺言のない相続では、相続人の確定、相続財産の把握、相続税負担の確認が不可欠です。

「相続税負担が大きく、住み慣れた家を処分しなければならなくなった」「税負担を考慮した遺産分割に同意してくれない相続人がいる」など、遺言がないことでのリスクは大きなものです。

遺産分割協議をスムーズに進めるためにも、遺言のない相続は税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる