遺産相続の基本 2020/8/5

内縁の妻(夫)は相続できる?事実婚の相手に遺産相続する方法は

内縁の妻(夫)は相続できる?事実婚の相手に遺産相続する方法は
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近年はライフスタイルの選択肢が増え、事実婚を選択するカップルも増えています。また、さまざまな事情から法律上の婚姻関係を結ぶことが困難で内縁関係を続けている方々もいらっしゃるでしょう。しかし、内縁関係の配偶者は法定相続人になれないことをご存じでしょうか?今回は内縁の配偶者(妻・夫)の相続について解説します。

内縁関係の配偶者(妻・夫)は相続できる?

「事実婚だが長年一緒に暮らしている妻に財産を遺したい」と考える方はいらっしゃるでしょう。

しかし、籍を入れていない限り内縁の妻(夫)には相続権がありません

内縁の妻(夫)とは

内縁関係の配偶者とは、事実上は夫婦でも婚姻届けを出していない場合の妻や夫のことです。内縁関係の配偶者も、双方の同意と実態があれば法律上の夫婦として事実上認められるため、事実婚などと呼ばれます。

内縁関係の夫婦には、同居協力義務・扶助義務・不貞行為などに対する慰謝料支払いの義務も生じます。

内縁関係の配偶者は法定相続人になれない

内縁関係の夫婦は法律上の夫婦に準ずる扱いを受けます。しかし法律上の夫婦との決定的な違いとして、配偶者の法定相続人になれないということが挙げられます。

何十年連れ添い自他ともに認める夫婦関係だったとしても、何もしなければ内縁関係の配偶者に財産を遺すことはできないのです。

内縁の配偶者が相続財産を取得するには

それでは、内縁の配偶者に相続財産を遺すにはどうしたらよいのでしょうか?

特別縁故者の申立てをする

法定相続人が1人もいない場合、もしくは法定相続人全員が相続放棄をした場合に限りますが、特別縁故者の申立てをすることで内縁の配偶者が相続できる場合もあります。

特別縁故者とは

特別縁故者とは、被相続人の世話をしていたり同居をしていた場合に、被相続人でないにもかかわらず特別に相続権が発生する人のことです。

特別縁故者になるには、下記の中のいずれかの実態があり、特別縁故者として家庭裁判所に認められなければなりません。

  • 被相続人と生計を共にしていた
  • 被相続人の療養看護に努めた
  • その他特別の縁故があった

特別縁故者の相続税負担

特別縁故者と認められると、被相続人の財産の一部もしくは全部を相続できますが、相続税が課されます。法定相続人ではありませんので、基礎控除はもちろんのこと、配偶者控除などの特例の適用も受けられませんから税負担は重くなります。

遺言書で遺贈する

内縁の配偶者に遺言書で相続財産を遺す場合、相続ではなく遺贈になります。被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人がいる場合、遺留分を請求される可能性があることに注意しましょう。

被相続人に子がいる場合の遺留分

被相続人とその元配偶者などとの間に子がいた場合、子の法定相続分は相続財産に対して100%で、遺留分は法定相続分の1/2です。相続財産の半分が遺留分として請求される可能性があるということですね。

被相続人の子の遺留分(戸籍上の配偶者がいない場合)
法定相続分 遺留分
100%(複数いる場合は人数で等分) 1/2(複数いる場合は人数で等分)

被相続人に子がいない場合の遺留分

被相続人に子がいない場合、被相続人の父母や祖父母、兄弟姉妹が法定相続人になりますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。父母や祖父母の遺留分は法定相続分の1/3です。

被相続人の父母(祖父母)の遺留分(戸籍上の配偶者がいない場合)
法定相続分 遺留分
100%(複数いる場合は人数で等分) 1/3(複数いる場合は人数で等分)

遺贈にも相続税がかかる

遺贈にも、相続税はかかります。内縁の配偶者は一親等の血族でも配偶者でもありませんから、2割加算といって相続税額にその20%が加算されます。

生前贈与する

内縁の配偶者へ確実に財産を遺すには、生前贈与という方法もあります。ただし年間110万円の非課税枠を超える贈与には贈与税がかかります。

生前贈与する財産の金額によっては多額の贈与税がかかりますので注意が必要でしょう。遺贈等と同じく、遺留分を請求される可能性もあります。

死因贈与する

死因贈与で内縁の配偶者に相続財産を遺す方法もあります。死因贈与とは、「被相続人が死亡したら贈与する」という契約を生前に交わすことです。

この契約は口約束でも成立しますが、死因贈与契約書を作成しておいた方が確実でしょう。遺贈と同じく遺留分は侵害できません。

死因贈与にも相続税がかかる

死因贈与にも、相続税がかかります。内縁の配偶者への死因贈与は遺贈と同じく2割加算の対象です。

生命保険金の受取人に指定する

死亡保険金は受取人の固有の財産になりますから、遺産分割の対象にならず指定された受取人に確実に渡ります。遺留分も請求できません。

生命保険の受取人は原則的に、戸籍上の被保険者の配偶者か2親等以内の血族を指定します。しかし最近では、内縁関係の配偶者を受取人として認める保険会社も増えています。

死亡保険金にも相続税がかかる

死亡保険金はみなし相続財産になりますから、相続税の課税対象です。

死亡保険金の非課税枠は法定相続人の人数によって決まりますが、内縁の配偶者は法定相続人ではありませんから死亡保険金を受け取っても非課税枠は増えません。そして、遺贈などと同じく2割加算の対象です。

内縁の配偶者との子は相続できるか

内縁の配偶者との実子は相続できる

内縁の妻との子は非嫡出子ですが、被相続人の実子ならば相続権があります。嫡出子と非嫡出子で相続割合に差はありません。

内縁の配偶者の連れ子は相続できるのか

内縁の配偶者の連れ子には、相続権はありません。被相続人と養子縁組をしていれば、他の子と同じ割合で相続をする権利があります。

嫡出子1人・非嫡出子2人・養子1人がいる場合の相続割合(戸籍上の配偶者がいない場合)
  法定相続分 遺留分
嫡出子 1/4 1/8
非嫡出子1 1/4 1/8
非嫡出子2 1/4 1/8
養子 1/4 1/8

被相続人に戸籍上の配偶者がいる場合

ここまで事実婚などの、法的な婚姻関係を結んでいない内縁関係の夫婦のケースを見てきましたが、法的な配偶者が別に存在する場合は状況がかわってきます。この場合、内縁関係というよりはいわゆる愛人関係とみなされることが多いでしょう。

特別縁故者になれない

被相続人に法的な配偶者がいる場合には、内縁の配偶者は特別縁故者にはなれません。

遺族年金をもらえない

遺族年金は被相続人の戸籍上の配偶者に受け取る権利があります。内縁の配偶者が受け取れるのは、戸籍上の配偶者との婚姻関係の実態がないと証明できる場合などの特殊なケースに限られるでしょう。

子の権利は奪われない

愛人関係であったとしても、被相続人との間の子は法定相続人です。非嫡出子となりますが、相続する権利は嫡出子と同じです。

また、実子でなくとも被相続人と養子縁組をしていれば他の子と同じように相続をする権利があります。ただし養子の場合、相続税の基礎控除額や非課税限度額の算定時に法定相続人の人数にカウントできるのは2人(実子がいる場合1人)までです。

内縁の配偶者への相続は税理士に相談を

内縁の配偶者への相続は、多額の相続税や贈与税がかかってしまうことがあります。法定相続人から遺留分を請求され、十分な財産を遺せないリスクも生じます。

内縁の配偶者への相続の疑問や不安は、税理士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

税理士に相談するメリット

  • 税務書類の作成や税務署への確定申告作業をすべて代行
  • 無駄な税金を支払う必要がなくなる
  • 現状の把握やアドバイスを受けることができる