遺言書の作成 2018/10/30

遺贈とは~普通の相続とどう違う?法定相続人以外への贈与

遺贈とは~普通の相続とどう違う?法定相続人以外への贈与
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遺贈とは遺言により遺言者の財産を無償で譲ることを言います。「相続させる」のか「遺贈する」のかによって登記申請の際の手続きや税金面での金額も異なってきます。今回の記事では遺贈の種類、相続と遺贈の違い、遺贈をする上での注意点についてご紹介していきます。

遺贈とは

遺贈(いぞう)とは「遺言」により遺言者の財産を無償で譲ることを言います。この遺贈は相手を選びませんので、「※法定相続人以外」の個人(又は法人)にも財産を残すことができます。

※法定相続人とは、民法で定められた相続人のことをいいます。

相続と遺贈の違い

相続は一般的に「法定相続人」に対して財産を残すことで、遺贈は遺言により「法定相続人以外」に財産を残すことを言います。遺贈は相続人に対しても行えますが実務上、遺贈する場合は「相続人以外」の人を指しています。
遺言書では原則、相続人に対しては遺贈ではなく「〇〇に相続させる」という表現を用います。

譲渡方法 受取人
相続 相続人
遺贈 相続人・相続人以外

「遺贈する」と「相続させる」の違い

遺言書に遺贈や相続の旨を記載する場合、相続人に対しては「相続させる」という文言を使い、法定相続人以外に対しては「遺贈する」という文言を使用します。法定相続人以外の人に対して「相続させる」という表現を使うことはできません。

譲渡対象 表現方法
法定相続人 相続させる
法定相続人以外 遺贈する

遺贈をする方法

遺贈をするためには「遺言書」などで意思表示をすることにより可能になります。お互いの合意などは不要です。遺言書には「普通方式」と「特別方式」に分かれており、普通方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。

遺贈する場合には上記のどの方式でも構いません。ただし、どの財産を誰に遺贈するのかを明確にし、文面には「遺贈する」と表記する必要があります。自筆証書遺言の場合には遺言者が自書し、必ず日付を記入し印鑑を押印します。

遺言書 普通方式 自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式

遺贈する際の遺言書の例

遺言書を作成する場合には、具体的には以下のような文面で遺言書を作成します。

特定遺贈のケース

遺言者〇〇〇〇〇は、次の通り遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記の預金を〇〇〇氏に遺贈する。
1〇〇銀行〇〇支店 遺言者名義の普通預金
2〇〇銀行〇〇支店 遺言者名義の定期預金

包括遺贈のケース

遺言者〇〇〇〇〇は、その有する財産の2分1を長男〇〇〇〇に相続させ、2分の1を〇〇〇氏に遺贈する。

遺言書で「相続」と「遺贈」の扱われ方

例えば遺言書で「相続人」に対して「遺贈する」と記載されていた場合どのように扱われるのでしょうか?この場合には「遺贈」として扱われてしまい、登記する場合にも遺言執行者または遺贈者の相続人全員との共同申請が必要となります。

逆に相続人ではない人に「相続する」と記載されていた場合、この場合には「遺贈」として扱われます。その他、「渡す」「あげる」などの表現も多くのケースで「遺贈」扱いとなります。

遺言書を作成する際には、誤った表現方法を選択していたために相続人に、迷惑をかけたり、トラブルとなってしまうこともあるため、専門家への相談をお勧めします。

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遺贈の種類~特定遺贈と包括遺贈の違い

遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」があります。

特定遺贈とは「A不動産は甲に遺贈する」というように遺贈する財産を特定しているもののことを言います。一方、包括遺贈とは相続財産を特定せず、財産の割合を指定して遺贈する方法です。例えば「遺産の1/3を甲に遺贈する」というような表現です。

特定遺贈と包括遺贈のメリット・デメリット

特定遺贈の場合は遺贈する財産が明確であるため遺言執行上トラブルも生じにくいというメリットがあります。しかし相続までの期間が長期にわたる場合、相続までの間に特定の財産を処分したり、無くなってしまうというケースもあります。そのような場合には遺言は無効となってしまうため、新たに遺言書を書き換える必要となります。

一方、包括遺贈であれば時間経過による財産興栄の変化にも柔軟に対応することができます。しかし包括受贈者はプラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も割合に応じて引き継がなければなりません。また財産の分割方法も詳細は決まっていないため結局は他の相続人と遺産分割協議を行う必要があります。(特定遺贈の場合は遺産分割協議を行う必要はありません。)

負担付遺贈とは~条件付きの遺贈

遺贈には特定遺贈や包括遺贈に加え、「負担付遺贈」というものがあります。負担付遺贈とは、「被相続人の介護をするかわりに、自宅の土地と建物を与える」というような条件付きの遺贈のことを言います。

この場合、遺言により「遺言執行者」を指定しておくことにより、受遺者が負担部分を適切に行っているかどうかを確認してもらうこともできます。また負担の内容を明確にしておくことも必要です。

義務を履行しない場合の遺贈の効果

負担付遺贈の義務を履行しない場合、相当期間を定めて義務の履行を催告することができます。それでも履行されないときは家庭裁判所に対して負担付遺贈の「取消」を請求することができます。取消が認められた場合、負担付遺贈は効果を失い、受遺者は遺産をもらうことができなくなります。

負担付遺贈を受遺者が放棄する場合

負担付遺贈は受遺者が遺贈を承認するか放棄するかを選ぶことができます。「負担付遺贈で課された条件を行いたくないから遺産を受け取らない」という選択も可能です。

遺贈を放棄したい場合

遺贈は一方的に承諾なく行うことができるため、遺贈の事実を知り、財産を受け取りたくないというケースもあります。そのような場合には「遺贈の放棄」をすることができます。

遺贈を放棄する方法は「特定遺贈」か「包括遺贈」かによって異なります。また一度放棄を行うとそれを撤回することはできません。

特定遺贈の放棄

放棄の期限:いつでも
放棄の方法:相続人または遺言執行者への意思表示

包括遺贈の放棄

放棄の期限:相続開始を知った日から3ヶ月以内
放棄の方法:家庭裁判所への申述

不動産登記をする際の注意点

相続か遺贈かで申請方法が異なる

不動産の登記申請をする場合、その要因が「相続」であるか「遺贈」であるかによって申請方法が異なってきます。不動産登記をする場合、登記原因が「相続」であるなら、その不動産を相続する人が単独で登記申請をすることができます。

しかし、登記原因が「遺贈」の場合、受遺者と、遺言執行者または遺贈者の相続人全員との「共同申請」により登記します。遺言執行者がいない場合には、相続人全員の署名押印、印鑑証明書が必要となります。

不動産の登記申請

相続 単独登記
遺贈 受遺者+遺言執行人or相続人全員

登記原因が「相続」か「遺贈」かによって手続きの手間が大きく変わりますので注意が必要です。

この記事のポイント

「遺贈」の場合の不動産登記

遺贈の場合は「共同申請」によって登記します。

相続と遺贈で異なる税金

「相続」「包括遺贈」「特定遺贈」では支払う税金もそれぞれ異なります。まず相続による取得の場合、「不動産取得税」はかからず、「登録免許税」も0.4%のみとなります。

一方遺贈の場合、「包括遺贈」のケースでは不動産取得税は非課税ですが、「特定遺贈」では3~4%の「不動産取得税」がかかります。また「登録免許税」も遺贈の場合には相続に比べ高く「包括遺贈」「特定遺贈」ともに2%の税金がかかります。まとめると以下のような形になります。

不動産取得税 登録免許税
相続 非課税 課税標準×0.4%
包括遺贈 非課税 課税標準×2.0%
特定遺贈 土地及び家屋
課税標準×3%
課税標準×2.0%
事務所・店舗等の家屋
課税標準×4%

※相続人に対する「遺贈」は課税上「相続」として扱われます。

この記事のポイント

不動産取得税の税率

不動産取得税は「包括遺贈」か「特定遺贈」かにより税率が異なります。

受遺者が亡くなった場合

遺贈による受遺者が先に亡くなっていた場合の扱いはどうなるのでしょうか。遺贈では被相続人より先に受遺者が亡くなった場合、効力を失います。つまり※代襲相続(だいしゅうそうぞく)は起こりません。

これに対し相続の場合は相続人が被相続人より先に亡くなった場合は代襲相続となり直系卑属が相続することになります。

※代襲相続とは、被相続人の死亡以前に被相続人の子や兄弟姉妹が死亡等により相続権を失っていた場合に、既に死亡してしまったこれらの人の代わりに、その子(被相続人から見て孫や甥姪)がこれらの人の相続権を承継することを言います。

借地権・借家権を取得した場合

借地権や借家権を取得した場合、「遺贈」の場合には賃貸人の承認が必要です。一方「相続」の場合には賃貸人の承諾は不要となっています。

例えば借地人である夫がなくなり妻が相続をした場合、借地権も相続され地主の承諾は不要となります。

借地権・借家権

遺贈 賃貸人の承認が必要
相続 賃貸人の承認は不要

この記事のポイント

借地権・借家権の遺贈

相続人以外への遺贈は地主への許可が必要

遺贈による2割加算

被相続人の1親等と配偶者以外への遺贈の場合、支払う相続税額に「2割」が加算されます。例えば相続財産に100万円の相続税がかかる場合、遺贈による受遺者は120万円の税金がかかることになります。

式)100万円×1.2=120万円

2割加算の対象となる人

  1. 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した人で、被相続人の配偶者、父母、子ではない人(例示:被相続人の兄弟姉妹や、おい、めいとして相続人となった人)
  2. 被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人

この記事のポイント

支払う相続税額が2割加算

兄弟・姉妹、おい、めいは2割加算の対象となります。

遺贈による節税

遺贈の対象は人だけではなく法人にも行うことができます。公益法人や認定NPO法人へ遺贈するケースも最近ではあります。認定NPO法人へ遺贈した財産に関して相続税は課税されません。

また相続人が受け取った財産を申告期限内に認定NPO法人へ寄付した場合にもその部分に関しては相続税が課税されません。

認定NPO法人へ遺贈する際の注意点

相続人の※遺留分を侵害しない範囲での遺贈であれば問題ないのですが、遺留分を越えてしまうと後々トラブルとなる場合があるので注意が必要です。

※相続人の遺留分とは法定相続人に対して留保される相続財産の割合のこと。

法定相続人 遺留分
配偶者と子(直系卑属) 被相続人の財産の1/2
配偶者と親(直系卑属)
配偶者のみ
子(直系卑属)のみ
親(直系尊属)のみ 被相続人の財産の1/3
兄弟姉妹 遺留分の権利なし

遺贈まとめ

以上「遺贈」について違いや税金面での注意事項などをご紹介しました。「遺贈」と「相続」、似たような意味合いのように思えますが、かかる税金や手続きにも違いが出てきます。

以下が今回の記事のポイントです。

  • 遺贈とは遺言により法定相続人以外へ財産を無償で譲ることを言います。
  • 遺贈には特定遺贈、包括遺贈、負担付遺贈の種類があります。
  • 遺言書では「相続させる」「遺贈する」という表現を用いましょう。
  • 法定相続人以外への財産の譲渡は税金上2割加算や不動産取得税や登録免許税が高くなります。
  • 認定NPO法人への遺贈により相続税を節税することも可能です。
  • 法定相続分を越えての遺贈はトラブルの原因となるので注意が必要です。

文面ではちょっとした違いですが「遺贈」するか「相続」するかによって税金面や手続きに大きな違いが生じてきます。遺言書を作成する際や、相続の具体的な税金計算や節税でのご相談は税理士などの専門家へご相談ください。

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